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#065

滋賀県彫金師 小林 浩之

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彫金師 
小林 浩之

Kobayashi Hiroyuki
1980年 滋賀県生まれ

家は祖父の代から錺金具かざりかなぐに関わる仕事に携わってきた。その家系の長男として生まれたが、学生時代はサッカーに夢中で、家業を継ぐことなど考えてもいなかった。

しかし、大学時代に留学していたイタリアで、自国の文化に誇りを持つイタリアの職人たちの姿を見て、「父の伝統工芸こそ日本が誇る文化だ」と思い、大学卒業後、現代の名工である父に師事。

それから10年、父のもとで研鑽の日々を送っている。

琵琶湖に面した滋賀県大津市

小林浩之さん
インタビュー

「彫金師」になろうとした、きっかけは?

幼い頃の僕の遊び場は父の工房でした。たがねを叩く音、何に使うのかわからない道具の数々。それら全てが何気ない日常の1コマだったのです。

サッカーをはじめてからは、夢中でボールを追いかける毎日を過ごしていたので、職人になろうということなどは、考えもしませんでした。

しかし、大学生になり、留学先のイタリアで大切なことに気づかされました。イタリアの職人たちは、自国の文化に誇りを持って仕事をしていました。

そんな彼らの姿を見ていて、幼い頃の何気ない日常こそが自分の目指すもの、父の仕事こそ誇れる仕事なのだ、と気づかされたのです。そして、父の跡を継ぎ彫金師になると決意し、卒業を機に正式に弟子入りを願い出ました。以来、父の横で10年間、たがねを叩いています。

金色の輝きを放つ
絢爛豪華な「錺金具かざりかなぐ

どんな「彫金師」になりたいですか?

錺金具はプレス加工やメッキの機械化が進み、手仕事による伝統的な技法は途絶えつつあります。しかし、父は伝統的な技法つまり「本物の錺金具」にこだわり続けています。

父の信念は、どんなに難しい仕事の依頼でも恐れずに形にすること。それこそが「仕事を征服する仕事だ」と言います。伝統的な技法により生み出された「本物の錺金具」は、数百年経ってもその形がきちんと残ります。つまり、後世に残る仕事なのです。

本物にこだわる父のもとで、本物の技術を学んでいこうと思います。そして、いつの日か、後世に残る大きな仕事を成し遂げたいと思っています。

「綺麗な線になるように
一打一打気持ちを込めて打っています」

師匠 小林正雄さん
インタビュー

浩之さんはどんな職人ですか?

慎重に丁寧に仕事をするタイプの職人だと思います。慎重で丁寧な仕事は、仕上がりをきれいにします。しかし、「慎重すぎる」のは、仕事の邪魔にもなります。もっと思い切りよく、スピードを上げて仕事をしてもらいたいと思う時があります。職人になって10年経ちますが、技術の進歩、職人としての成長を日々感じています。

いつか2人で手掛けた錺金具で、神社仏閣を装飾できればと思っています。

弟子 小林 浩之さん
弟子
小林 浩之さん
師匠 小林正雄さん
師匠
小林 正雄さん

取材を終えて

取材の合間、小林さんは「子どもができたら跡を継がせたいな…」と優しい笑顔で話してくれました。

そして、「自分の仕事、自分の作品を子どもに見せたい、そのためにも良い作品を作り続けていきたい」と話してくれました。

その眼差しは誇りに満ち溢れ、錺金具のようにきらきらと輝いていました。

錺金具

錺金具かざりかなぐ

日本建築を彩る金色の金具。錺金具は、現存する世界最古の木造建築「法隆寺」にも使われるなど、日本建築やお神輿·山車などを絢爛に装飾してきた。また装飾だけでなく、クギを隠すクギ隠しなどの役割も併せ持っている。

桃山時代から江戸時代にかけて最盛期を迎え、装飾性が高く大型の物が数多く作られた。