Numata Hanae
1986年 茨城県生まれ
高校生の頃から、伝統工芸全般に興味があり、将来手仕事でものづくりができる職につきたいと思っていた。
18歳の頃、会津塗の技術を教える「会津漆器技術後継者訓練校」の存在を知る。
高倍率の中、見事合格し、2年間訓練校で技術を学ぶ。
その後、より深く沈金の技法を学ぶため、角田弘司さんに弟子入り。
会津塗の世界に入って5年。師匠の背中を追いかけ、日々懸命に会津塗と向き合う。
会津塗の加飾は手順だけ見てみると、あまり手間のかかるものではありません。いたってシンプルです。だからこそ、その人の持っている技術のみが問われます。材料などでごまかしがきかず、純粋な技術による部分が大きい工芸であることが、私にとって最大の魅力でした。
特に、沈金は他の技法と比べ物にならない程、手段が少ないのです。ですが、たとえば点を一つでも多く彫れば、途端に全体のバランスは崩れます。シンプルでありながら、とても繊細な技術が必要です。
また、一度彫るとやり直しはききません。そのような条件下で技を凝らし、自分のイメージする模様を表現することは、私にとってすごく面白いですね。
師匠は、良いとか悪いとかは特におっしゃらないです。だから、いつも「これでいいのかなぁ」と思うんですけれど、「見て覚えなさい」ということなのかなと受け取っています。
一日でも早く一人前の職人になれるよう、試行錯誤する毎日ですね。
自分の芯がしっかりとある人ですね。女性ですが、ちょっと男っぽいというか、一本筋が通っていて負けず嫌い。自分はこうしたいという思いがはっきりしています。職人として、そういう姿勢を持っているのは大切なことだと思います。
私は高校卒業後に、父から沈金の技法を受け継ぎましたが、昔は一人前になるまでに5年と言われていました。今は沈金職人自体が5、6人くらいしかいなくなってしまいましたので、技術を学ぼうとしてくれる若い方がいるのは大変よろこばしいです。
たくさんのいい作品を作っていってもらうためにも、初心を忘れず、日々倦むことなく技術を高めていってほしいですね。
仕事では手先を使った細かな作業が多い沼田さんですが、体を動かすことも好きだそうで、趣味は剣道。
自宅を訪れた際には木刀で素振りを披露してくれました。
剣道で養った集中力が仕事にも活かされているのかもしれません。
師匠の角田さんは、穏やかな人柄で弟子思い。
ずっと保管していた沼田さんの作品の数々を、誇らしげに見せてくれました。
とても温かな師弟関係。それを取材を通して深く感じました。
福島県会津若松市を代表する伝統工芸。
1590年に近江から国替えとなった蒲生 氏郷が木地師や塗師を伴って会津に移り、椀の製造を領内に広めたのが始まり。
その後、会津は漆の栽培から加飾までを一貫して手がける一大産地となるが、戊辰戦争で壊滅的な打撃を受ける。
しかし明治中期に再興し、会津は今もなお、日本有数の漆器の産地として知られる。
日本人好みの縁起の良い意匠や、多彩な加飾法が特色。