Kajiura Asuka
1981年 岐阜県生まれ
小学校の時からアナウンサーに憧れ、大学時代にはテレビ局の学生アナウンサーに採用。大学卒業後は、NHK三重県津放送局のキャスターとなり、幼い頃からの夢を叶えた。
その後、担当する番組で様々な伝統工芸に携わる職人たちを取材。その中で、繊細で優美な彫刻を施す伊勢根付に魅了され、また中川氏(現師匠)と出会い、その優しい人柄にも惹かれた。そして2009年にNHKを退職し、中川氏に弟子入り。以来、師のもとで修行の日々を送っている。
物を作ることは、とても苦手でした。ですから、「小さい頃から物作りが好き」とか、「もともと職人になりたかった」ということは全くありません。一言で言えば、師匠の人柄と生き方に憧れて、この世界に飛び込んだのです。
師匠は職人を35年間もやってこられているのに、未だに「100点満点の作品なんて作ったことはない」とおっしゃいます。私から見れば、パーフェクト、100点満点なのですが。
でも、その言葉で気づきました。「一生をかけて追求できる、職人の仕事って素晴らしい!」。
NHKでキャスターをやっていた頃、よく考えていたのが、「今後、私はどんな生き方をしていけばいいのだろう?」ということでした。一生キャスターでいれるはずはありませんから、どうにか20代の内に答えを出そうと思っていました。そんな中、その答えである「師匠」、そして「伊勢根付」に出会えたことに、今ではとても感謝しています。
とてもたくましい方です。ご本人もよく、「俺は世界がどうなったって生きていける」と、笑っておっしゃっていますが、本当にその通りだと思います。
釣りが好きで、料理も上手い、もともと大工さんだったので自分で何でも作ることができる。
何より、たくさんの良き仲間に囲まれています。師匠の工房には、毎日たくさんの方が顔を出されます。根付の関係者をはじめ、お友達、ご近所の方々。やはり師匠のお人柄が、人を惹きつけるのだと思います。
私も師匠のような生き方をしたいと思います。本当に憧れです。
とても向上心が強いです。工房での作業の他にも、自宅で作品作りを行っているので、たぶん毎日深夜まで作業しているんじゃないでしょうか。「作業をしながら寝ちゃって、指を切っちゃいました」、なんて話をよく聞きますから(笑)。彼女のどんなことでも挑戦してみる、という姿勢は、自分には無いものなのですごいと思います。
また、県内の色々な若手職人を集めて、一緒に活動するグループを作ったこともすごいと思います。伊勢根付も後継者不足に悩んでいる工芸品の1つです。そういう横の繋がりを持ち、切磋琢磨し、時には支え合っていくことで、志なかばで職を離れていく若者は減っていくと思います。
彼女の技術向上はもちろんですが、様々な活動もできる限りバックアップしていきたいと思っています。
TV番組のキャスターという立場から見た日本の職人という仕事。
彼女の目に映ったのは、見事な技、工芸品の美しさや素晴らしさはもとより、職人さんの工芸品への熱く愛情溢れる姿。仕事という枠を超え、その生き方に憧れを抱いたという。
そして、師匠の中川氏と出会い、その時、「この人の下で職人として生きたい」と、強く感じたとのこと。
作業をする彼女の笑顔には、師への尊敬と憧れ、伊勢根付への愛情が溢れている。
そして、彼女を見守る師の眼差しには、この道を選び真摯に研鑽を積む若き職人への感謝と、弟子を育てるための厳しさが表れていた。
およそ3〜4㎝ほどの木に施す彫刻で、江戸時代、印籠や巾着、煙草入れを帯に提げる留め具として用いられた。関東の根付は象牙製のものが多いが、伊勢の根付はつげの木の中でも最高級の「 朝熊つげ」で作られている。
「朝熊つげ」は三重県伊勢市の朝熊山で採れるもので、年輪が均一で固く、「木の宝石」と称されている。
伊勢根付は、海外では浮世絵、刀、漆と並んで「日本の四大芸術」として紹介されるほど人気がある。作品の題材は、身近な植物をはじめ、干支、七福神、芸能、歴史説話など様々あり、「福」や「運」がつくような縁起もの、蛙=帰る、茄子=成すなど、言葉遊びに見せて切なる願いを表したものが多い。