Morimoto Miki
1984年 福岡県生まれ
幼い頃から物作りが好きで「職人」という仕事に憧れていた。
獣医の父、麻酔科医の母という家庭で育ち、進学した琉球大学では生物学を学んだ。
卒業後の進路は、母の勧めもあり、幼い頃から憧れていた職人を目指すことに。
母が着物好きで博多織に触れる機会が多かったこともあり博多織の後継者の発掘と育成を目指し設立された「博多織デベロップメントカレッジ」に入学。
3年間技術を研鑽し、2014年3月に卒業。自宅を改造し作業場を構え、博多織と向き合う生活を送っている。
もともと、物作りが好きでした。職人さんの「その人にしかできない技術」とか、「オリジナリティ」に憧れていました。テレビで職人さんの密着ドキュメントをやっていると、ついつい見入っちゃいますね。見ながら「かっこいいな…」と思いを馳せていました。
「まさか自分が職人になるなんて」、実は少し驚いています。
博多織に限りませんが、伝統工芸品は長く使えるところがいいですね。
家には曾祖母の着物があります。世代を超え、ずっと繋いでいけるところに伝統工芸ならではの良さを感じます。
私が小さい頃、母が締めていた博多織の帯が憧れでした。
「大きくなったら自分も!」とずっと思っていました。
いつか、誰かにとってそういう存在になる、そんな作品を織るのが夢ですね。
糸を触っているときが一番楽しいですね。だから糸繰りは特に好きな作業です。絹糸の肌触りがすごく良くって、〝つるん〟としていて。特に博多織で使う糸は細いので、繊細な触り心地がたまらないんです。
柔らかいものを触っているときって、人間は落ち着きますよね。糸を紡ぐことが古来からずっと伝わってきたのも「糸を触っていると、人は安心するから」と思っています。
反対に織っているときは、完成品が楽しみで、待ち遠しい気持ちで取り組んでいます。
自分の思い描いた織物が形になった瞬間も、この仕事をやっていてよかった!楽しい!と思えるポイントですね。本当に良い仕事に就けたと思っています。
博多織の魅力はやはり、絹糸の光沢や手触りではないでしょうか。綿とか化繊には醸し出せない質感があると思います。
また、博多織の着物は着ているうちに〝ふわぁ~っと〟温もってくるんですね。
そして帯は、一度締めれば緩まない。気品ある質感な上に、普段使いにも適している。そんなところも、惹きつけられた理由です。
ですが、これからは技術だけで生き残っていくのは難しいと思います。
伝統を活かしながら新しいものを作っていかなければならない。そのためにはデザイン、配色、日本文化など、作品に対する知識を頭に入れることが大切になると思います。
「人間国宝になりたい!」初日のインタビューで森本さんはこう答えました。
博多織デベロップメントカレッジで3年、独立して作品製作を始めてから4年。
伝統工芸士の受験資格が得られる12年にもまだ遠い彼女の言葉に初めは戸惑いましたが、取材を重ねるごとに、これは彼女の本心からの言葉であり、実現したい夢であることが分かりました。
仕事に取り組む姿勢、努力、こだわり、そして何より博多織を愛する気持ち。彼女が手掛けた作品は、美しく、優雅で品があり、いつか本当に夢を実現させる、そう思わせるものばかりでした。
きっとやってくれる。夢に向かって邁進する彼女をいつまでも応援し続けたいと思います。
鎌倉時代、博多の商人 満田弥三右衛門が、宋で織物の製法を修得し、家伝として伝えたのが起原。
細いたて糸を多く用い、太いよこ糸を強く打ち込む製法が特徴。それにより、主にたて糸を浮かせることで柄を織り出している。
現在はライフスタイルの変化とともに、ドレスやネクタイなど新しい展開をみせている。