Baba Takashi
1983年 岡山県生まれ
備前焼作家・馬場祥輔の長男として備前焼の故郷「伊部」に生まれる。
幼い頃から父の工房で遊び、陶芸家になろうと思ったのは小学生の時。依頼された「箸置き」を作り、お客さんが喜んでくれたことがきっかけ。
以来、備前焼作家を目指し、芸術大学で彫刻を学び、卒業後、他産地の技法を学ぶため京都で研鑽を積み、2007年から地元に戻り土に向き合う。
伝統技法を守りながら自分らしい備前焼とは何かを考え、現代備前を探求し続けている。
父から多くを学びました。中でも大切にしている教えが、「土に素直、火に素直」。どんな土にも必ずいいところ、個性があります。土と素直に向き合い、その土の持つ魅力を引き出してあげられるかが備前焼の神髄です。
備前焼は、土と炎で様々な景色を描き、美しい色彩を出します。これほど土のパワーを感じる焼き物は他には見当たらない気がします。
父は亡くなりましたが作品は残っています。それが、父の生きた証なのです。「自分が生きた証を残せる」という仕事は素敵だと思います。
自分も「生きた証」として、後世に残る作品を作りたいと思います。そのためには、土と炎に素直に向き合って、土に、形に、火に対して妥協せず、生涯かけて自分ならではの備前焼を追求したいと思います。僕の生きた証を後世の人々に見てもらいたいです。
備前焼の一番の魅力は、他の産地の焼き物を真似していないことです。誕生して約1000年、釉薬を一切使わず長時間焼き締める「無釉焼締」という技法を守り続けてきました。
他の焼き物は長い歴史の中で、途中で釉薬を使うようになりました。
だからこそ、素材である「土」の魅力を最大限に引き出す技術が必要です。土、水、火、風という自然の力を作り手が操作して、自然と人間が同化するような姿勢で作品に向き合います。
それでいて、焼け色の景色、表現の領域が広いのも備前焼の魅力です。
作品というものは、時代が作り手の手を通じて作らせているのだと思います。
馬場さんのように、これからの備前焼を支える若い方には備前焼の歴史を知ってもらい、多くの作品を作ってほしいと思います。作品から作品が生まれるのです。先人たちが築いた技法の上に新たな風を吹かせてほしいと思います。
10日間に渡る窯焚きが終わった後、馬場さんの一言が印象的でした。「命を削って作品は生まれる」。
馬場さんには2歳の愛娘 美里ちゃんがいます。「作品は我が子と同じ」、「作品作りは子育てと同じで愛情を注ぎ一つひとつ大切に、丁寧に、妥協することなく作る」と言っていました。
だからこそ素敵な作品が生まれるのだと感じました。美里ちゃんと遊ぶ馬場さんは、優しいパパの顔に。彼の作品からは、土への優しさ、温もり、丁寧さ、が伝わってきました。
岡山県備前市伊部周辺を産地とする焼き物。
釉薬を一切使用せず、絵付けもしないため、土味がよく表れる。
古墳時代の須恵器の技法「無釉焼締」の伝統を守り、1000年の間、窯の火を絶やしたことがない。
備前の土を1点ずつ成形、土の性質、窯の詰め方、窯焼きの温度変化など、様々な要素が作品に作用するため、1つとして同じ景色にはならない。
また、1200℃以上の高温で10日から2週間焼くため堅く焼き締まる。