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柄巻師つかまきし
久保 謙太郎

Kubo Kentaro
1992年 福岡県生まれ

日本刀の持ち手の部分「つか」を形作る柄巻師つかまきし。柄巻師の父から、「人のできないことをしなさい」と教えられ育った。

職人歴は7年だが、2017年に行われた「現代刀職展」の柄巻の技術を競う部門で、日本美術刀剣保存協会会長賞(日本一)を受賞。

最高傑作と称される江戸時代の柄巻に、少しでも近づこうと日々努力を続けている。

10年以上寝かせた台木を柄の形に整えた後、
磨いてツヤを出した鮫皮(エイの皮)を巻く。

久保 謙太郎さん インタビュー
柄巻師を目指したきっかけは?

高校生の頃、父の仕事がどのようなことをやっているのか初めて理解でき、「すごいなぁ」と感じたことは今でも覚えています。しかし、その時はまだ柄巻の奥深さまでは分かりませんでした。そして父が苦労して身につけた技術を、一代で終わらせてしまうのは勿体ないと思い、技術を受け継ぐためこの道に進む決心をしました。

でも、高校を卒業した頃は悩みました。そんな時、母から「一度やってみたら?」と後押しされたことが、職人としての一歩を踏み出すきっかけになりました。

やっとつい最近、柄巻の本当の魅力を分かってきたように思います。
やればやる程、難しいと感じる。でも、それに挑戦することが大好きです。

柄糸を巻いていく。
居合道で培った集中力が活かされている。

柄巻の魅力とは?

幸運なことに、江戸時代に作られた「本物」と謳われる柄巻をたくさん見ることができました。それらを見て、「何てすごい技術なんだ」と心惹きつけられて、のめり込んでいきました。以来、いかに江戸時代の「本物」と謳われる作品に近づけるかが、自分にとってのテーマになっています。

江戸時代の技術は現代の技術とは格段に違い、随所にこだわりが見えます。糸目の通り、ムラのなさ、歪みのなさなど、真似しようと思っても簡単にできるものではありません。

日々、どうしたら江戸時代の作品に近づけられるか試行錯誤です。誰が見ても感動し、誰が見ても「すごい」と思う柄巻を巻けるようになることが僕の夢であり、こんな気持ちを抱かせてくれたことが柄巻の魅力だと思っています。

久保 謙太郎さん
弟子
久保 謙太郎さん
久保 純一さん
師匠
久保 純一さん

師匠
久保 純一さん インタビュー

柄巻師という仕事は?

私が小学生の頃、約2000年前の土器の破片を見つけたことがあって、そんなに古いものが残っていることにすごく感動しました。それから古いものが好きになり、考古学にも興味を持ちました。そしてその頃、祖父の家にあった日本刀と出会い、プレゼントしてもらったんです。この刀こそ、私がこの道を歩きはじめた起点と言えます。この道を選んで全く後悔はしていません。天職だと思っています。

私の場合は柄だけでなくさやも作っているので、製作中は「どんなものができるだろう」と全体を想像しながらつくるのが楽しいですね。

今まで100点の出来だと思ったことは一度もなく、決して満足したことはありません。45年間、柄巻をやっていても、江戸時代の職人の仕事のレベルに比べたらまだまだ。江戸時代の仕事を100点としたら、最近ようやく50点を出せるようになってきたでしょうか。今でも「次はこう改良しよう」と考え続ける毎日です。

取材を終えて

謙太郎さんは明るく穏やかで、取材に行くのが楽しみになる職人さんでした。

行橋市の俯瞰を撮影するため、市内の馬ヶ岳に登った際、謙太郎さんも同行してくれました。

その道中で、高校生時代の陸上部で経験した挫折の話を聞きました。謙太郎さんは新人戦の4×100mリレーで全九州3位に入り、3年生の時にはインターハイの出場を決めていましたが、本番直前、怪我をしてしまいます。その悔しさを拭い去れない謙太郎さんに、代わりに出場する後輩が、「ずっと先輩に憧れて、自分の目標でした」と声をかけてくれたそうです。謙太郎さんはその言葉に救われ、仲間たちにも支えられてきたと言います。

柄巻師として日本一になることができたのは、謙太郎さんの技術・向上心はもちろんですが、彼の言葉の中に、多くの方々の支えがあったことへの感謝の気持ちを感じました。
おめでとうございます。挑戦を続け、さらなる高みを目指してください。

柄

柄巻師つかまきし

日本刀の持ち手である「つか」を補強、装飾する職人のこと。柄巻は、刀剣を操る時の滑り止めと手持ちを良くすることや、装飾の目的で行われる。

わが国に古くから伝承される特殊な工芸技術であり、特に江戸時代のものは種類も多岐に渡り最高傑作と言われる。

柄の補強と柄糸つかいとのズレ防止の工夫として、鮫皮と呼ばれるエイの皮が使われている。

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