Takagi Nozomu
1984年 岐阜県生まれ
「日本の伝統産業に関わりたい、貢献したい」という強い気持ちがあり、高校卒業後の進路に悩んでいたところ、「京都伝統工芸大学校」の存在を知り、迷わず進学を決意。そこでは漆芸を専攻した。
そして専門学校の先生の紹介により、現在の勤め先である「表完工房」に入社し、代表の川瀬表完氏に師事。
優れた京漆器塗師となるための修業の日々を送っている。
高校の進路相談で「なりたい職業は?」を聞かれた時、「伝統工芸士」と答えました。
手先が器用なわけでもなく、具体的に何も決まっていなかったのですが、とにかく、この国のためになるような仕事、中でも伝統工芸の技術を引き継ぐ仕事に就けたら最高だと思っていました。
そんな中、京都に伝統工芸産業の後継者の育成を目指して創設された学校があることを知り、迷わず進学を決めました。そして、さまざまな伝統工芸がある中、漆を選んだのは、その美しさに惹かれたからです。
特に私は、黒の「真塗」に惚れ込みました。深く味わいのあるのに決して主張し過ぎず美しい。「これを一生をかけて追求したい」そう思ったのです。
漆を塗る職人を塗師と呼びます。
塗師の仕事は、本当に単純作業の連続です。塗っては研いで、塗っては研いでの繰り返しです。普通の人なら飽きてしまうと思いますが、自分にはとても合っていると思います。
ゆっくり少しづつですが、完成していく様が楽しくて仕方ありませんし、この仕事は、やればやるほど作品の艶や、深みに繋がっていくところも大きな魅力です。
そして、「これは良い仕事をしてあるな!」と感じてもらえる作品を作れるようになりたいです。
京漆器は、使い方によっては何百年も使えます。そして、年月が経てば経つ程、さらに味わい深くなります。
自分が死んでも、作品は残る可能性がある。いつか、そんな作品を生み出してみたいと思っています。
真面目だと思います。そして、この真面目さは仕事ができるように成ればなるほど、度合いが増しているように思います。
塗師の仕事において「夜の1時間の下準備は、朝の3時間に相当する」と言われています。漆は、乾きを待たなくては次へ進めない作業だからです。これは、簡単なようで体得するには時間がかかります。髙木君はようやくそれを分かってきたようです。
最近では、上塗りという漆塗りの最終工程も任せられるようになりました。京漆器の歴史は約1200年と言われ、その製法はほとんど変わらず、現代の職人もそれを守って作業しています。伝統を守るのは大切であり、難しさもありますが、彼のような真面目な職人がこのまま順調に、どんどん伸びていって、この歴史を守り、発展させていって欲しいと思ってます。期待しています。
漆器組合の会合はもちろん、さまざまな分野でリーダーを目指す人々が集まる講習会、お茶会などに積極的に参加する髙木さんの行動力に驚きました。少しでも「自分に必要だ」と感じたら積極的に参加するのだそうです。
そんな髙木さんですから人脈は広く、さまざまな分野の職人をはじめ、学校の先生や、ショップの店員、ライティングデザイナーさんなどなどなど。この人脈と会得した技術を武器に「これまで誰も見たことがない新たな京漆器を生み出す」、そんな予感がしました。
794年の平安遷都により、奈良から京都に漆文化が伝わり京漆器は花開いた。特に、室町時代以降は茶の湯文化と共に発展を遂げ、抹茶を入れる棗、菓子器、盆など、さまざまな形で京漆器は茶道に関わり、目の肥えた茶道家達は、こぞってより良い茶道具を求めた。それは、職人達の進歩に繋がり、新しい技術・技法が誕生した。
また、茶の湯文化は日本全国各地に広がったことにより、漆器の文化も各地に伝わり、独自に発展するものの、いつの時代も漆器文化の主役は京漆器であり、現代でも京漆器は全国の漆器産業の中心的役割りを担っている。